Category 日本語

自己表現が苦手なあなたへ

自己表現が苦手なあなたへ。 バロックは「仮面をかぶれる」音楽です 。 「もっと自分を出して」 「あなたの感情を込めて」 レッスンや本番で、そう言われて固まってしまったことはありませんか。 音楽をしていると、「自己表現」という言葉から逃れられません。 でも、人前で自分の内面をさらけ出すのが、実は少し苦手——そういう方は、決して少なくないと思います。 かくいう私も、そのひとりでした。 今日は、そんな方にこそ知ってほしい、バロック音楽の魅力についてお話しします。  ロマン派は「素顔」、 バロックは「仮面」  音楽の表現には、大きく分けて二つの方向があります。 ロマン派以降の音楽は、作曲家や演奏家が自分の内面をさらけ出す音楽です。 私の喜び、私の苦悩、私の孤独——「私」という個人の感情を、素顔で語る。 だからこそ深く胸を打ちますが、その分、演奏する側は自分の内面を差し出すことを求められます。 一方、バロック音楽が表現するのは、「私」の生の感情ではありません。 個人的な告白ではなく、みんなが共有できる感情の型を、音で描くのです。 これは、仮面劇の仮面によく似ています。 昔の劇では、役者が仮面をつけて舞台に立ちました。 観客は、その仮面を見た瞬間に「ああ、この役は怒っている」「この役は恋をしている」と分かる。 役者自身がどんな人間かは関係ありません。仮面が、感情を代わりに語ってくれるのです。 バロック音楽を演奏するとは、この仮面をかぶることに近いんです。  仮面は、感情を隠す道具ではない  ここで、大切なことをひとつ。 「仮面をかぶる」と聞くと、感情を隠す、無表情になる、というイメージを持つかもしれません。 でも、まったく逆です。 仮面は、感情を隠すためではなく、感情をくっきり見せるためのものです。 素顔のままの、曖昧で複雑な感情よりも、「これは喜びです」と示す仮面のほうが、観客にはずっと明確に伝わる。 仮面をかぶることで、かえって大胆に、はっきりと感情を語れるようになります。 自己表現が苦手な方にとって、この構造はとても心強いものだと思います。 バロックでは、自分の内面をさらけ出す必要がありません。その代わりに、作品が持つ感情——その仮面を引き受けて、堂々と語ればいい。 前に立つのは「私」ではなく「作品」です。 自分をさらすのではなく、作品を語る。 主役は私ではなく、音楽そのもの。 そう考えると、少し肩の力が抜けませんか。 ただし、ひとつだけ。仮面をかぶることは、感情を出さなくていい、ということではありません。 仮面の下では、その作品の感情を、全力で語る必要があります。楽をするための仮面ではなく、堂々と語るための仮面です。 自分を出すのが恥ずかしくても、作品の仮面をかぶれば、大胆になれる。 私がバロック音楽を好きな理由のひとつが、まさにここにあります。シャイな人でも、仮面の力を借りて、豊かに、雄弁に語ることができる。バロックは、そういう懐の深さを持った音楽なのです。  この「見え方」を、3日間でお伝えしています.…

音楽を通して、人を育てる

今日は、私が関わっている生徒の将来について、じっくり考える時間がありました。 演奏のことだけではありません。 どうすれば、自分で練習を組み立てられるようになるのか。どうすれば、自分の言葉で音楽を考えられるようになるのか。困ったときに、周りへ助けを求められるようになるのか。 そんなことを考えながら、改めて気づいたことがあります。 それは、私が目指しているのは「演奏を教える先生」ではなく、音楽を通して“人”を育てる先生なのだ、ということです。 この考え方は、私が一人で作り上げたものではありません。 学生時代、カナダで出会った恩師は、演奏技術を教えるだけにとどまらず、どうすれば自立した音楽家になれるのか、その方向性を示してくれました。 正解を与えるのではなく、自分で考え、自分で判断できるようになること。 その姿勢は、その後ベルリンで学び、ヨーロッパで演奏活動を続ける中でも、多くの素晴らしい音楽家たちから受け継いできたものです。 だから私も、教える立場に立ったとき、単に「答え」を渡すのではなく、まずは問いかけから始めるようにしています。 そして答えを渡すときにも、必ずその考え方と理由を添えるようにしています。 受講生や生徒に、少しずつ 「自分で考える力」「自分で判断する力」 を育ててほしいからです。 この音楽は何を語ろうとしているのか。なぜ、この装飾音を選ぶのか。なぜ、このダイナミクスが必要なのか。 そんな問いを重ねながら、自分自身で判断できる音楽家へ育っていってほしい。 他人の演奏をコピーするのではなく、自分の音楽を表現できる人を育てたい。 私は、表現力は才能だけの問題ではなく、育てられるものだと思っています。 「センスがある・ない」ではなく、考え方を学び、経験を積み重ねることで育っていくものです。 AIの発達によって、技術や知識はますます手に入りやすい時代になりました。 だからこそ、「その人にしかできない演奏」には、これからますます価値が生まれると私は思っています。 プロであっても、アマチュアであっても、自分の言葉で音楽を語れる人は、音楽をもっと深く楽しめる。 そして、音楽を通して身につけた「自分で考え、判断する力」は、きっと人生のさまざまな場面でも支えになってくれるはずです。 実は、7月7日、七夕の日から開催する 『バッハの見え方がガラリと変わる:バロック音楽表現のための3ステップ』 という3Days講座も、この考え方が土台になっています。 「もっと音楽的に弾いて。」 音楽を学ぶ人なら、一度は言われたことがある言葉ではないでしょうか。 でも、「もっと音楽的に」が分からないから、多くの人が迷ってしまう。 私がお伝えしたいのは、「一問一答式の答え」ではありません。 音楽を読み解き、自分で判断できるようになるための考え方です。 それは、私自身が恩師から受け取り、ヨーロッパで磨き続けてきたもの。 今度は、それを次の世代へ手渡していきたいと思っています。 もし今、 「バッハはあまり得意ではない。」 「どう指導すればいいのか分からず、練習曲のようになってしまう。」 「避けては通れないからこそ、もう一度しっかり学びたい。」 そんな思いがある方は、ぜひ講座の詳細をご覧ください。 『バッハの見え方がガラリと変わる バロック音楽表現のための3ステップ』 7月7日・9日・10日の21時から、各回約60分のオンライン講義です。…

実演・解説付き!バッハ無伴奏パルティータのトリセツ

\バロック・ヴァイオリンで聴いてみたい/ バッハ無伴奏パルティータのトリセツ 大好評開催中の 『バロック音楽のトリセツ』 演奏解説つき特別回を 一般公開! 『バロック音楽のトリセツ』講座では、演奏家や音楽教室の先生向けに、バロック音楽の演奏・指導に役立つ知識を実践的にお伝えしています。 今回は、この回のために自宅で録音した、バッハ無伴奏ヴァイオリンパルティータロ短調より、AllmandeとCorrenteの演奏も公開🎶  バロック・ヴァイオリンでは実際にどんなふうに演奏しているの? モダン楽器でスタイルを取り入れて演奏したいけどどうしたらいい? そんな疑問にお答えします! 5月27日(水) に開催しました アーカイブ販売中 『バロック音楽のトリセツ』受講生:無料 一般:3,500円 こんな方におすすめです! バッハの無伴奏作品を深く理解し、演奏したい! バッハは楽譜に表現記号がないからどうしていいか分からない 感情を込めて弾いてもダメ出しされる・しっくりこない バロックスタイルを意識するとつまらない演奏になってしまう 演奏家の録音が千差万別すぎて参考にならない・・・ 教える時にどう伝えていいか分からない \一つでも当てはまる方、ぜひご参加ください/ ヴァイオリニストではないけれど、バロック音楽の演奏スタイルに興味がある方、大歓迎! アーカイブ販売中お申し込み締め切り:6月3日(水)視聴期間6月15日(月)まで   🎁お申し込み特典🎁 ・講師の録音映像アクセス権(プロの録音ではありませんが、この講座のために録音いたしました)  ・あなたのトリルは大丈夫?魅力的な装飾音のつけ方PDF 高橋未希プロフィール イギリスから、バロック音楽の魅力を伝えるヴァイオリニスト。カナダ、ドイツ、イギリスの3カ国で学び、2009年より、イギリスを拠点にバロックヴァイオリニストとして演奏活動を行っている。 テレマン国際古楽コンクールならびに、古楽の世界では最も権威あるブルージュ国際古楽コンクールでで優勝。 ソロやリサイタルのほか、ガブリエリ・コンソート、エイジ・オブ・インライトゥンメント管弦楽団などで演奏、各種古楽アンサンブルのリーダーを務め、イングリッシュ・コンサートの客演コンサート・ミストレスを務めた経験もある。 バーミンガム音楽院で講師として後進の育成に努める傍ら、セミナー、公開レッスン、コンサートの3部形式で学び体験できるBaroque Discovery Dayという講習会をイギリスのバーミンガムで開催。 ヨーロッパで20年以上一流古楽アンサンブルで演奏してきた経験を活かし、バロック音楽の基礎知識をわかりやすく実践的にお伝えする『バロック音楽のトリセツ』講座を主催、現在4期を好評開催中。 参加費用バロック音楽のトリセツ受講生並びにサロン生:無料一般:3,500円  …

その音、何を表していますか?

楽器にも意味がある! 先日ロンドンで、 ヘンデル《セシリア讃歌(Ode for St. Cecilia’s Day)》を演奏しました。 リハーサルと本番の合間に外を歩くと、 公園にはチューリップが咲き、 街全体が春の空気に包まれていました。 その風景を見ながら、改めて感じたことがあります。 ■ 音は「意味」を持っていた 《セシリア讃歌》の中では、 それぞれの楽器が特定の感情やイメージを表現します。 トランペットは栄光や勝利、 弦楽器は愛や優しさ、 フルートは静けさや自然。 これは単なる音色の違いではなく、当時の人々が 👉「音=意味を持つもの」 として捉えていたことを示しています。 音楽は抽象的なものではなく、 感情や自然を表す“言語”のような存在でした。 ⸻ ■ なぜその楽器がその意味を持つのか ここで重要なのは、 👉「なぜトランペットが栄光なのか?」 👉「なぜフルートが自然なのか?」 という感性です。 トランペットは当時、王権や軍事、キリスト教の聖なるラッパのイメージと結びついていました。 弦楽器は人の声に近く、最も人間的な感情を表現するものとされていました。 フルートは牧歌的な場面や自然、静けさを象徴する楽器でした。 つまりこれは、当時の社会や生活と結びついた 「共有された感覚」だったのです。 ⸻ ■ 鍵盤作品にも存在する「見えないオーケストレーション」 この考え方は、オーケストラ作品だけに限りません。 鍵盤作品や独奏曲でも、…

マルタで感じたこと。

フーガの聞き方ヒントの学び。 11月末、ガブリエリ・コンソートのお仕事でマルタに行ってきました。指揮はポール・マクリッシュ。 演奏したのはヘンデルの《メサイア》。 会場は、ルーベンスの絵画があることで有名な、とても豪華な教会です。 マルタは、地中海に浮かぶ小さな島。光の強さ、植物、石灰を使った白い建物……いかにも地中海、という雰囲気なのですが、不思議なことに、 と、生活感はかなりイギリス。かつてイギリス領だった歴史を、日常のあちこちに感じる、不思議な場所でした。 リハーサル中、印象に残った話があります。ヘンデルの合唱曲、フーガになっている楽章を練習していたときのことです。 マクリッシュが、 「フーガでは、声部によって“拍感”が違うものを重ねることがある」 と話していました。 この楽章では、主題を提示する声部と、それに続く応答フレーズのグループとで、拍の感じ方・運動感がはっきり違っている。 その瞬間、「そういえば、バッハのフーガもまさにそうだな」と思ったんです。 バッハでは、テーマを縮めたり、引き伸ばしたりしながら、違う“質感”として重ねていくことがよくありますよね。 これを「理論」として理解する前に、そういう感覚がある、ということを耳と身体に留めておく。それだけで、フーガの聴こえ方も、弾き方も、本当に変わってきます。 今回の《3日でわかるバロック音楽》の講座でも、私は専門的な知識を前面に出すことは、あまり意識していませんでした。 それよりも大切にしたかったのは、実際に音楽をどう感じ、どう演奏につなげるか。 だからこそ、マグダレーナ・バッハの練習帳から《ミュゼット》を取り上げ、具体的に「どう語るか」「どこが“事件”なのか」を一緒に見ていきました。 私自身にとっても、とても学びの多い時間でしたし、受講生の皆さんにも喜んでいただけたのでは、と感じています。 もし、 と感じている方がいらしたら、 先日開催した《弾きたくなる!教えたくなる!3日でわかるバロック音楽》の講座アーカイブをご覧いただけます。 この講座では、 などを、専門知識を振りかざすのではなく、実際に音楽をするための視点としてお話ししています。 現在、期間限定で見逃し配信をご案内しています。 📅 販売期間:12月15日まで📅 アーカイブ視聴:12月17日まで ▶ 詳細・お申し込みはこちら クリスマスの時期は、キャロルやバロック作品に触れる機会も多いと思います。 年末に一度、バロック音楽の「聴き方・感じ方・弾き方」を整理する時間として、ご活用いただけたら嬉しいです。

実演・解説付き!バッハ無伴奏ソナタのトリセツ

\バロック・ヴァイオリンで聴いてみたい/ バッハ無伴奏ヴァイオリン・ソナタのトリセツ 大好評開催中の『バロック音楽のトリセツ』演奏解説つき特別回を一般公開! 『バロック音楽のトリセツ』講座では、演奏家や音楽教室の先生向けに、バロック音楽の演奏・指導に役立つ知識を実践的にお伝えしています。 今回は、この回のために教会で録音した、バッハ無伴奏ヴァイオリンソナタト短調より、AdagioとFugaの演奏も公開🎶  バロック・ヴァイオリンでは実際にどんなふうに演奏しているの? モダン楽器でスタイルを取り入れて演奏したいけどどうしたらいい? そんな疑問にお答えします! 11月19日(水) 21:00〜22:30 オンライン開催(Zoom) アーカイブあり 『バロック音楽のトリセツ』受講生:無料 一般:3,500円 https://vimeo.com/1136574302/debbe03619?share=copy&fl=sv&fe=ci 今すぐ申し込む! こんな方におすすめです! バッハの無伴奏ソナタを深く理解し、演奏したい! バッハは楽譜に表現記号がないからどうしていいか分からない 感情を込めて弾いてもダメ出しされる・しっくりこない バロックスタイルを意識するとつまらない演奏になってしまう 演奏家の録音が千差万別すぎて参考にならない・・・ 教える時にどう伝えていいか分からない \一つでも当てはまる方、ぜひご参加ください/ ヴァイオリニストではないけれど、バロック音楽の演奏スタイルに興味がある方、大歓迎! 開催日時2025年11月19日(水)21:00〜22:30 ZOOM開催(アーカイブあり) 🎁お申し込み特典🎁 ・講師の録音映像アクセス権(プロの録音ではありませんが、響きの良い教会でこの講座のために録音したバッハ無伴奏ヴァイオリンソナタ・ト短調のアダージョとフーガの録音です)  ・あなたのトリルは大丈夫?魅力的な装飾音のつけ方PDF 高橋未希プロフィール イギリスから、バロック音楽の魅力を伝えるヴァイオリニスト。カナダ、ドイツ、イギリスの3カ国で学び、2009年より、イギリスを拠点にバロックヴァイオリニストとして演奏活動を行っている。 テレマン国際古楽コンクールならびに、古楽の世界では最も権威あるブルージュ国際古楽コンクールでで優勝。 ソロやリサイタルのほか、ガブリエリ・コンソート、エイジ・オブ・インライトゥンメント管弦楽団などで演奏、各種古楽アンサンブルのリーダーを務め、イングリッシュ・コンサートの客演コンサート・ミストレスを務めた経験もある。 バーミンガム音楽院で講師として後進の育成に努める傍ら、セミナー、公開レッスン、コンサートの3部形式で学び体験できるBaroque Discovery Dayという講習会をイギリスのバーミンガムで開催。 ヨーロッパで20年以上一流古楽アンサンブルで演奏してきた経験を活かし、バロック音楽の基礎知識をわかりやすく実践的にお伝えする『バロック音楽のトリセツ』講座を主催、現在3期を大好評開催中。 参加料バロック音楽のトリセツ受講生並びにサロン生:無料一般:3,500円 一般チケット3,500円…

🎶バッハ《ロ短調ミサ》とイギリス流コンサート事情

先週末まで、Armonico Consortというアンサンブルの公演でバッハの《ロ短調ミサ》を演奏していました。9月末と10月初めにかけて、全3公演。壮大なこの作品を何度弾いても、そのたびに新しい発見があります。 さて、イギリスのコンサート現場には、いつもながらの“お国柄”が出ます。今回も例に漏れず、リハーサルは本番当日のゲネプロのみ!(いわゆる、当日リハ+本番一発勝負スタイルです😅)ただし3公演あったので、2回目からは少し落ち着いた雰囲気に。でも3回目には出演できない人もいて、メンバーが一部入れ替わるというのも、いかにもイギリスらしい柔軟(?)な展開でした。 ✨ ラテン語の壁、毎回思うこと ロ短調ミサを演奏するたびに、必ず思うことがあります。それは——「ラテン語、ちゃんと勉強しておけばよかった!」 ということ。 日本では、カトリック系の学校でもない限り、ラテン語を学ぶ機会はほとんどありませんよね。でもイギリスでは、いわゆる進学校(Grammar Schoolなど)では普通にラテン語を学ぶらしいんです。この文化の違い、なかなか面白いです。 そういえば昔、初めてオーケストラのオーディションに応募したとき、書類に「C.V.を提出のこと」と書かれていて、英和辞典を引いても意味がわからず…人に聞いてようやく、「Curriculum Vitae(ラテン語)=履歴書」の略だと知りました。 「なんなんだこれは!」と思ったのを今でも覚えています😂どうやらヨーロッパではこれが“普通の言い方”なんですね。とはいえ、個人的にはもう少し分かりやすい言葉を使ってほしいところです…! 💫 「Dona nobis pacem」— 我らに平和を そしてこの作品の最後を締めくくる「Dona nobis pacem(我らに平和を与えたまえ)」の部分。このフレーズを演奏するたびに、いつも胸が熱くなります。 バロック時代は、戦争や宗教対立が今よりもずっと身近にあった時代。その中で人々がこの言葉を歌ったとき、どれほど切実に平和を願っていたことでしょう。 そして現代でも、戦争が絶えず起こり続けている今、この祈りの言葉が持つ意味は、ますます深く心に響きます。音楽を通して、「平和を願う声」は時代を超えて伝わってくるのだと感じました。 🎻 おわりに バッハの《ロ短調ミサ》は、宗教音楽の枠を超えて、人間そのものの祈りや希望を描いた作品だと思います。今回の演奏でも、そんなバッハのメッセージを改めて感じる時間になりました。そして、音楽が今もこうして「平和への祈り」を届けていることに、静かな感動を覚えます。

🎭野外オペラシーズン終了!

☀️今夏のオペラシーズンが、無事に終了しました! イギリスの夏といえば、音楽好きにはたまらない「野外オペラシーズン」。 …といっても、「野外」で演奏するわけではないんです。笑 ちゃんと屋根のあるオペラハウスでの上演します。 ただ、開演前や長めの休憩(90分くらい!)の時間に、 観客の皆様が、緑あふれる敷地でテーブルを囲み、ピクニックを楽しみます。 しかも、ドレスコードあり! 燕尾服の紳士やドレス姿の淑女が芝生の上で優雅に食事をする光景は、映画のワンシーンのようです✨ 「音楽」「自然」「社交」が一体となった、イギリスならではの文化イベントと言えます。 写真は会場のオペラハウス。リハーサル期間でしたので、正装の紳士淑女はいらっしゃいません。 🕊️ 今年はベートーヴェン『フィデリオ』! そんな素敵な舞台に、今年も《ザ・イングリッシュ・コンサート》からお声がけいただき、 6月から7月にかけて、ベートーヴェン唯一のオペラ『フィデリオ』を、古楽器で演奏させていただきました。 昨年はラモーの『プラテー』を演奏していたので、今年はまったく違うジャンル。 改めて、「ピリオド奏者」としての幅広さを実感しています。 🧐「ピリオド奏者」って? 私は自分のことを「バロック・ヴァイオリニスト」と紹介することが多いのですが、 古楽の世界では「ピリオド奏者」という言葉がよく使われます。 この“ピリオド”とは、「歴史的なある時代」という意味。 つまり、作曲された時代に合ったスタイルや楽器で演奏するという姿勢を表しています。 なので、「バロック」だけでなく、 ・ルネサンス時代の作品を演奏することもあれば、 ・古典派(ハイドンやモーツァルト)や、 ・最近ではロマン派(ベートーヴェンやシューベルトなど)も扱うことがあるんです。 今回は、ベートーヴェンのドラマティックな音楽に、古楽器ならではの音色で取り組むという、 とてもやりがいのあるプロジェクトでした🎶 🏰 美しいオペラハウスでの7公演 会場は、美しい敷地に建てられたオペラハウス。 毎回、自然と一体になったような環境で演奏できたことが、とても印象に残っています。 演奏会は全7公演。 素晴らしい奏者のみなさんとご一緒できて、学びの多い充実した時間でした。 大きなオーケストラの一部となる感覚は、特別ですね🎶 🎉 そして、次は…! ひと段落…と思いきや! ここからまた、ワクワクなイベントやプロジェクトが続々と始まります✨ 📣 まずは、7月30日に特別なお知らせを公開予定!…

通奏低音は伴奏じゃない⁉️

通奏低音は伴奏じゃない⁉️ バロック音楽では、上で歌う旋律ではなく、下で鳴っている“低音”こそが音楽の本体🎶 「通奏低音=伴奏パート」と思われがちですが、実は、それは大きな誤解。 通奏低音は、ただの和音のサポートではなく、和声・リズム・推進力のエンジン💨チェンバロやオルガン奏者は、即興で音楽を創造しています。 ときには、上の旋律が“添え物”のように感じられることさえある。私自身、バロック作品を演奏していて「音楽が下から湧き上がってくる」そんな瞬間を何度も経験しています。 通奏低音を聴くと、バロック音楽の“呼吸”が見えてくる。 あなたの中の「音楽の主役」、ちょっと入れ替えてみませんか? 高橋未希のライン公式アカウントへぜひお友達登録してください!イベントや講座、そしてライブ配信などの情報がお受け取りになれます。 現在、🎁LINE登録特典🎁\あなたはどのくらい古楽に向いている?/【見分け方チェックリスト】プレゼント中!

メサイアの楽しみ方

12月13日から16日まで、久しぶりにスペインでメサイアを演奏してきました。オミクロン株が世間を騒がせ始めた時期にぎりぎりのタイミングで行われたツアーとなり、ペーパーワークやPCR検査に簡易検査の手続きなどで大変ストレスフルでもありました。それでも、団員全員、コロナの陽性検査結果が出ることもなく無事帰国することができ、ホッとしました。(イギリスへ戻って数日後にはスペインが英国からの入国を原則禁止したため、本当にギリギリのタイミングでした。) クリスマスといえばヘンデルのメサイア。日本でそう思っていらっしゃる方って、実質どのくらいいるのでしょう?年末の第九には全く及ばない、のが私の印象です。日本はキリスト教国でもありませんしね。 英語圏では、クリスマスといえばまずメサイアです。12月に入ると、途端に演奏依頼がメサイアのオンパレードになります。カナダに留学していた頃にも、何回かこの時期にメサイアを演奏した覚えがあります。 ですが、カナダでは何故か第二部の最後の曲、つまりハレルヤコーラスがプログラムの最後に来るように曲順が調整されていることがほとんどでした。つまり、第三部の名曲を抜粋して、第二部の間に差し込み、ハレルヤで終了、となっていて、第三部の多くの曲がカットされていました。 一方、イギリスではそんなことはなく、カットする曲はあるにしても(何しろ全て演奏すると長いので)、ちゃんと順番通りに演奏されます。ヘンデルはイギリスではほぼ自国の作曲家扱いなので、妥当なところしょう。 ところで、英語圏では、メサイアの演奏中不思議なことが起こります。 私が初めてカナダでメサイアの演奏を聴きに行った時のこと。ハレルヤコーラスが始まるやいなや、聴衆が客席から次々に起立したのです。郷に入っては郷に従え、ということで私も恐る恐る立ち上がったわけですが、後に、これは英語圏では普通のことで、どうやら『イギリスのジョージ二世が、ハレルヤコーラスの演奏に感動して起立した』ことに由来するらしいという説明を聞くことになりました。王様が立ち上がった場合、もちろん臣下一同が着席したままでいるわけにはいかず、全員が釣られて起立するわけです。・・・とはいうものの、実際には、本当にジョージ二世が感動のあまり起立したのか(単に座り疲れたとか、他の理由だったのかも知れない)、いやそもそも、ジョージ二世が演奏を聴く機会はあったのかなど、この由来に疑問は残ります。 由来はさておいても、長ーい演奏時間の中、しかも後半の半ばあたりで一度足を伸ばせる機会ということで(?)この習慣、英語圏ではなかなかにポピュラーです。イギリスでメサイアを演奏すると、ほぼ100%の確率で、ハレルヤ起立現象が起こります。 では、他の国ではどうなのか? 日本で学生時代にメサイアを演奏する機会がそういえば一度ありましたが、その時には聴衆の皆様は行儀良く最後まで座っていらっしゃいました。日本でも、時々ハレルヤ起立はあるようですが、なにぶん大学在学中に海外へ出てしまったため、日本の現状はよく知りません。 カナダでは起立現象が起きました。ほぼ名目上とはいえ、カナダの君主は一応エリザベス女王陛下、カナダドルには女王陛下が印刷されるような国ですので、まあ妥当かも知れません。ただし、立ち上がるスピードはイギリスほど早くなかった覚えがあります。(私のような新参者が多いお国柄だからかも知れません。) では、最近訪問したスペインはどうか。スペインは、多くのイギリス人が休暇を楽しむ国というばかりでなく、実は定年退職後に老後を過ごすことも多い国だそうです。熱心な信者も多いカトリック教国ということもあり、メサイアの演奏需要はとても高いといえます。しかも、聴くだけではなく、アマチュア合唱団がこぞって参加する、参加型メサイアが大変にポピュラー。イギリスから楽団とプロの室内合唱団を呼び寄せ、現地のアマチュア合唱団と共にコンサート、という形態で、私も過去数回、スペインへ行きました。(これには、メセナ活動を推奨されている大手銀行の資金援助がある、という要因も大きいと思います。) 結論から言うと、スペインではハレルヤ起立現象は起こりません。そういえば、ドイツ留学時代に一度メサイアを演奏したときも、誰も立ち上がりませんでした。もっとも、ドイツのクリスマス音楽はなんと言ってもバッハのクリスマス・オラトリオですので、そもそもメサイアは滅多に演奏されません。恐らく、大陸ヨーロッパではハレルヤ起立はあまり起きないのだと思います。 気がつけば私もイギリスへ移住して10年以上が経過し、英国スタイルのメサイアに随分慣らされました。ハレルヤ起立に関しては賛否両論あるようですが、私はこの習慣、別にいいんじゃないかと思っています。長いコンサートの中、堂々と足を伸ばす機会が持てるわけですし、ついでに、聴衆が能動的に起立することで、ちょっとでも『参加した』感を味わえているのではないかと勘ぐっています。日本で無理に実行するほどのことでもないとは思いますが、もし大多数が立ち上がるようなら、一緒に立ち上がってみても、バチは当たらないのではないでしょうか。

Verified by MonsterInsights