楽器にも意味がある!
先日ロンドンで、
ヘンデル《セシリア讃歌(Ode for St. Cecilia’s Day)》を演奏しました。
リハーサルと本番の合間に外を歩くと、
公園にはチューリップが咲き、
街全体が春の空気に包まれていました。
その風景を見ながら、改めて感じたことがあります。

■ 音は「意味」を持っていた
《セシリア讃歌》の中では、
それぞれの楽器が特定の感情やイメージを表現します。
トランペットは栄光や勝利、
弦楽器は愛や優しさ、
フルートは静けさや自然。
これは単なる音色の違いではなく、当時の人々が
👉「音=意味を持つもの」
として捉えていたことを示しています。
音楽は抽象的なものではなく、
感情や自然を表す“言語”のような存在でした。
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■ なぜその楽器がその意味を持つのか
ここで重要なのは、
👉「なぜトランペットが栄光なのか?」
👉「なぜフルートが自然なのか?」
という感性です。
トランペットは当時、王権や軍事、キリスト教の聖なるラッパのイメージと結びついていました。
弦楽器は人の声に近く、最も人間的な感情を表現するものとされていました。
フルートは牧歌的な場面や自然、静けさを象徴する楽器でした。
つまりこれは、当時の社会や生活と結びついた
「共有された感覚」だったのです。
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■ 鍵盤作品にも存在する「見えないオーケストレーション」
この考え方は、オーケストラ作品だけに限りません。
鍵盤作品や独奏曲でも、
👉「どの楽器のように響いているか」
を想像することで、音楽の見え方は大きく変わります。
例えば、ヴィヴァルディの四季から、「秋」の3楽章では、明らかに狩のホルンを真似た箇所がありますし、
昨日学生にレッスンしていたテレマンの4台ヴァイオリンのためのコンチェルトにも、似たようなリズムの場所が、明らかにホルンを想定して書かれている。
フレンチバロック作品では、トラヴェルソ(バロック時代のフルート)をイメージするとしっくりする作品がたくさんあるし、
ヴァイオリン作品でも、打楽器を模しているな、と感じる場所もある。
このように捉えることで、単なる音の並びが、
立体的な音楽へと変わっていきます。
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■ 「何を表している音なのか」
バロック音楽を演奏するとき、
👉「どう弾くか」だけでなく
👉「何を表している音なのか」
を考えることが、とても重要だと感じています。
楽譜の中に答えを探すだけではなく、その背後にある感情や風景、
そして当時の感性に目を向けること。
それによって、音楽をより自然に、
そして説得力を持って聴き手の皆さまへ届けることができます。